今日のテーマは物理シミュレーション。皆さんは物理でシミュレーションというとどのようなイメージを持ちますか?例えば天気予報では、気象予報士やお天気おねえさんが雲の衛星画像を見せながら今後どのように天気が変化していくのかを解説してくれていますね。あの天気予報もシミュレーションが大いに役立っています。しかし、そうは言われてもシミュレーションというものは身近でないのは確か。今日は、そんなシミュレーションが少しでも身近になるように、そして物理ってこんな面白さもあるんだと知ってもらえるようにと思って記事を書いています。

さて、話は変わって、理科教室を開くようになる前、生徒にこんな質問を投げかけたことがあります。「油と水をコップに入れると、油と水はどんな状態になる?」と。経験上、「コップの下に水がたまって、水の上に油が浮かぶ」ということを容易に想像できると思います。

では、このコップに氷を入れると氷はどこに行くのか。いかがでしょうか。おそらく確信を持って答えられる人は少ないのではないかなと思います。質問された生徒も答えに窮していました。そこで、実際にやってみることにしたのです。下の写真のように。

実際にやってみると、氷は水の層と油の層との間で浮かびます。水や清涼飲料水に氷を入れると氷は水面に浮かぶのですから、普段我々が目にする光景とは全く違いますね。そう、とても不思議なのです。しかし、高校物理レベルまで到達しているとなぜこのようなことが生じるのかを理解できるようになります。ただし、氷が写真の位置に到達したという前提(定常状態)のもとで、ですけどね。

じゃあ氷を入れた瞬間から、氷がこのような位置に落ち着くまでを再現することはできるのでしょうか。そのダイナミックな動きを再現することはできるのでしょうか。答えはYESです。しかもダイナミックに計算することができます。そう、冒頭に申し上げたシミュレーションというやつです。実際にプログラムを作ってみました。

下の図はその計算結果です。黄色の部分が油、水色の部分が水、青の部分が氷を表しています。図の縦軸は垂直(鉛直)方向、図の横軸は水平方向の位置を示しています。キャプションのtは、氷をコップに投入してから経過した時間(秒)を示しています。

観察してみると、氷を投入すると、まず一旦水の層に入っています。そして跳ね返って油の層に入って、水と油の層の間で振動しながら(シミュレーションだとこの振動がなかなか消えませんが(※1))最終的には油と水の間に氷が浮かんでいることが分かります。しかも限りなく油側に氷が浮かびます。上の写真と見比べると、写真でも確かに限りなく油側に浮かんでいることがわかりますね。「油と水が入ったコップに氷を入れるとどうなるか。」については、このような感じでシミュレーションすることができました。

どうでしょうか。少しはシミュレーションが身近になったでしょうか。世の中で生じる物理現象を再現するなんて不気味に思う人もいるかもしれませんが、これができるからこそ今の自動車や飛行機が存在しているのです。現実に起こる物理現象は、このようにシミュレーションすることができます。

ちなみに、なぜ氷は限りなく油の層に近い位置に浮かぶのでしょうか?考えてみてください。「密度」の概念を知っていると正確に答えられると思います。

ところで私は、このプログラムを作るに過程で、あるものを考慮することを忘れてしまいました。それに気づかず作ってしまったのがこれです。当然後で直しましたが。

永遠にコップの中で運動し続ける氷。さて、いったい私は、氷に働く何の力を考慮し忘れたのでしょうか。

世の中に当然ある重要な力です。よかったらこれも考えてみてください。

 

※1 氷の上下運動による内部重力波の発生(波による運動エネルギーの伝播と減衰(抵抗))や氷に働くせん断応力や粘性等を条件に入れてないためだと考えられます。

科学記事「油と水が入ったコップに氷を入れると?シミュレーション」
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